【3607】 ○ 米澤 穂信 『可燃物 (2023/07 文藝春秋) ★★★☆

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新シリーズは「意外性」という共通項で結ばれる作品群。やや作り過ぎ?

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可燃物』['23年]

 2023(令和5)年「週刊文春ミステリーベスト10」(国内部門)第1位、2024 (令和6)年「このミステリーがすごい!」(別冊宝島)(国内編)第1位、2024年「ミステリが読みたい!」(早川書房)(国内部門)第1位の「3冠」達成作。因みに、2024年「本格ミステリ・ベスト10」(探偵小説研究会)は第2位、、2024年「本格ミステリ大賞」(本格ミステリ作家クラブ)も次点。群馬県警本部の刑事部捜査第一課の葛(かつら)警部が不可解な事件に挑む短編集で、新シリーズということになりますが、相変わらずベストテンに強い作家です。


可燃物01.jpg「崖の下」... 群馬県のスキー場で5人連れのスキー客のうち、4人と連絡が取れないことが分かった。遭難者のうち男性2人が、スキー場のコースから約300メートル離れた崖の下で発見された。1人は意識不明の重体で救急搬送され、もう1人は頸動脈を刺されたことによる失血死であった。状況的に犯人は救急搬送された男性だと葛警部は考えたが、凶器が見当たらなかった―。

 犯人はどうやって、殺害したのか? これ、みんな「つらら」が凶器だと思うのでは。その裏をかいている点は旨いけれど、本人も苦痛に喘いでいるはずで、そうした状況でそんな考え浮かぶなあ。ちょっと意外過ぎ。


可燃物02.jpg「ねむけ」... 強盗傷害事件の容疑者がいるが、物証が無いため逮捕できない。その容疑者の運転するワゴン車が、深夜の交差点で軽自動車と衝突事故を起こす。過失運転で容疑者を検挙できないか。葛たちの聞き込みの結果、深夜の事故にも関わらず4件の目撃証言があった。葛は目撃者の4人には何らかの繋がりがあるはずだと考えるが―。

 タイトルがネタばれ気味だが、それは読後に振り返って思うことであって、目撃者の4人には何らかの繋がりがあるはずだと考える、その繋がりがなんであるかという点で、読者の一般的な予想を裏切ってみせる。違った意味での共通点はあったわけだけど、偶然過ぎる気も。

可燃物03.jpg「命の恩」... 榛名山で人間の右上腕部が発見され、警察による捜査が行われ、バラバラの遺体が次々に見つかった。遺体にはいくつかの不審な点があった。そして、なぜ家族連れで賑わう場所にバラバラにした遺体を捨てたのか―。

 収録作品の中でも複雑な構造を持つ作品。 中盤で犯人が逮捕されるが、実はそこからが本番。ただし、フツーの人間が恩義のためにここまでやるだろうかという疑問も。行為自体は極めて猟奇的で、まともな神経では実行できないと思った。
 
 
可燃物04.jpg「可燃物」... ゴミ集積所にあった可燃物のゴミが、連続で放火されるという事件が発生した。葛たちが捜査を始めると、容疑者が特定される前に犯行がピタリと止まった。犯行の動機は何か? なぜ放火は止まったのか? 犯人の姿が像を結ばず捜査は行き詰まるかに見えたが―。

 犯人が放火をした目的が、途中から見当はついたものの、あまりに意外だった。生ゴミだから燃えにくい、風が弱いからと大火事にならないというのはあくまで蓋然性の話ではないか。
 
 
可燃物05.jpg「本物か」... ファミリーレストランで立て籠もり事件が発生した。店内の状況が分からない中、葛は店から逃げてきた客やスタッフから話を聞くが、証言がどこか噛み合わない―。

 なかなか面白いオチだった。葛がどの時点で"真相"に気づいたかというと、かなり早い時点から少なくとも何か変だと感じていたことは、読み直してみてわかるという、そんな楽しみ方もできる作品だった。
  

 
 「意外性」という共通項で結ばれる作品群で、思い込みに囚われず真相に迫る葛警部にうってつけの事件群でもありました。ただ、「意外性」にこだわった分、作り過ぎている印象もあったでしょうか。

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This page contains a single entry by wada published on 2025年7月17日 03:42.

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